前々回「バイアグラの歴史」、前回「レビトラの歴史」をしたためた。

ならば、シアリスの歴史も認めねばなるまい。

EDという疾患を世に知らしめたバイアグラ。 そのバイアグラへ果敢に挑戦したレビトラ。 語弊はあるかもしれないが、この2剤が患者側よりも開発側に立った治療薬であったのに対して

シアリスは患者側の都合に合わせた治療薬といえるのではないだろうか。

国内正規品 日本新薬(日本イーライリリー社製造)のシアリス錠10mg、20mg

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バイアグラは狭心症の治療薬開発中の臨床試験において副作用であった勃起力の増長を逆手に取って主作用とした。

またレビトラは純粋に勃起不全の治療薬として開発がなされたが、その主眼はバイアグラの主作用をより安定化させ、副作用を最小限に抑えることにあった。

シアリスは「ED治療薬を服用したら1時間後には性行為に及んでいなくてはならない」というプレッシャーから患者を開放することに主眼が置かれた。

そもそもEDには心因性のED、器質性のED、薬剤性のEDとある。

薬剤性のEDとは常用薬の副作用が原因となるEDで、精神安定剤や抗うつ薬・睡眠薬・向精神薬の副作用や、降圧剤や高脂血症治療薬、胃潰瘍治療薬などの長期服用による副作用としてのEDである。

器質性のEDとは内部分泌機能低下(加齢やストレス、喫煙、飲酒などによる男性ホルモンの1つであるテストステロンの低下等の内部分泌機能低下による)、神経障害(不慮な事故による脊椎などの脳から陰茎までの伝達神経の損傷等による神経障害による)、血管障害(加齢や糖尿病・高血圧・高脂血症などの生活習慣病に起因する動脈硬化、前立腺がんや前立腺肥大の外科的手術による陰茎付近の神経や血管の損傷などの血管障害による)など、物理的に勃起が阻害されるEDのことを指す。

心因性のEDとはうつ病や統合失調症といった精神疾患のみならず、社会でのストレスや夫婦関係などの人間関係、または幼少期のトラウマ、性行為に対する緊張感などが原因となり、身体機能そのものの問題ではないものを心因性EDと呼ぶ。

実はED患者の34%は心因性のEDであり、そのほとんどが初めての相手との性行為で失敗してしまったというトラウマに起因する。

そのトラウマを引きずり「また勃たなかったらどうしよう」「勃たせなければ」と意識すればするほど性的状態とは裏腹に期待するほどの勃起を得られないという状態だ。

前回の「レビトラの歴史」に一覧を記載したが、バイアグラの薬効は服用後1時間後から4時間であり、レビトラの薬効は服用後42分から5時間18分となっている。

つまり服用のタイミングを逆算するか、服用してから性行為に至るまでの時間を考慮しなくてはならない。

これがプレッシャーとなり、予定通りに事が運べなくなってしまうケースも少なからずあり、初めての相手の場合なら尚のこと慎重にならざるを得ない。

そこに目をつけたのが製造元のイーライ・リリー社であった。

イーライ・リリー社はアイコス社と共同出資で設立したリリー・アイコス社で新成分の配活に着手した。

バイアグラ、レビトラと同程度の効果を保持させつつ、薬効を長くする研究が始まったのである。

そして誕生したのがタダラフィルである。

タダラフィルの分子構造はバイアグラの主成分シルデナフィルやレビトラの主成分であるバルデナフィルに比べるとよりシンプルなものとなり、シルデナフィルが開発のターゲットとしたニトログリセリンに近い構造となっている。

当時リリー・アイコス社の最高責任者であったケリー博士によれば、このシンプルさが薬効の延長を可能にしたとの事。

発売当初は36時間持続すると大げさに宣伝されていたが、発売から9年が経過した現在では患者の追跡調査によりシアリスの薬効は服用後2時間から18時間となっている。

これによりバイアグラのように性行為前の食事の油分を気にしたり、食事のタイミングや服用のタイミングを計算するという手間を考慮する必要性がなくなり、プレッシャーから開放されたED治療が可能となったのである。

現在ではタダラフィルの持つ血管拡張作用が、シルデナフィル同様に肺動脈性肺高血圧症の治療薬として承認を受けており(アドシルカ)、さらに前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療薬としても承認がおりている(ザルティア)。

シアリスのページ

シアリスの添付文書