副作用より怖いもの

さて、後編ではいよいよ効果と副作用について

前編はコチラ

一般では「副作用」という言葉に「怖いもの」というイメージを持っていると思われる

まず知ってもらいたいのは「副作用」という言葉の意味

副作用とはその治療薬の治療目的(正作用)とは違う作用をしてしまうことを指す

どういうことかと言えば…
バイアグラを例にとって説明しよう

バイアグラの正作用は「勃起不全の治療」であるが、主成分には陰茎に限らず血管拡張を促進する作用があるため、肺動脈の血圧を低下させるという副作用がある

肺動脈の血圧を低下させるなんて、聞いただけで身の毛もよだつ怖さを感じるであろう

2008年、レバチオという治療薬が発売になった
これまで肺動脈性高血圧症に苦しんでいた患者さん達にとっては、正に希望の星となる新薬の誕生だったわけだが、しかし、この新薬にも副作用がある…

なんと! この治療薬を服用して性的に興奮すると勃起力が増幅してしまうという恐ろしい副作用があったのだ!!!

すでにお気づきだと思うが、バイアグラとレバチオは主成分が同じシルデナフィルなのである

バイアグラという勃起不全薬にとっての副作用が肺動脈圧の低下であり、レバチオという肺動脈性高血圧薬にとっての副作用が勃起力の増幅というわけだ

薬品名 正作用 副作用
バイアグラ 勃起力の増幅 肺動脈の低下
レバチオ 肺動脈の低下 勃起力の増幅

正作用(効果)と副作用は表裏一体

薬の話しではなくなってしまうが、あなたはリスクのない儲け話を信じるだろうか?

20世紀末に「ローリスク・ハイリターン」という言葉が流行したが、その言葉を作った証券会社は倒産してしまった

21世紀の今、リクスがない=儲けも少ない儲けが大きい=リスクが大きいということに誰も異論はないはずだ

実は治療薬も同じなのだ

効果があるということは必ず副作用があり、副作用がないということは効果もないということに他ならない

よく宣伝文句に「天然成分100%だから副作用の心配はありません!」というものがあるが、あれは「天然成分100%だから効果は一切ありません!」と言っているのと同じなのである

よく考えてもらえば分かるのだが、本当に明確な効果があるのなら治療法として確立されているはずではないか

そうなっていない、流行が過ぎたら消えてしまうということは最初から効果なんてなかったという揺るぎない証拠である

そして是非とも知っておいて欲しいのは

なぜ治療薬は販売の時点で副作用が明らかになっているのか

という点である

例えばバイアグラを製造販売している製薬メーカーはファイザー。
この会社は製薬メーカーとして世界第一位の企業で、毎年9,000億円を新薬開発に投じている

新薬は一流の研究者たちの汗の結晶から始まり、何百匹という動物実験、有志による臨床試験(人体実験)を経てようやく日の目を見るのだ

新薬誕生までのプロセスは

  1. 有能な研究者たちが新薬の構造を0から設計し、この世に存在しない成分を作り出す
  2. その仮説に基づいてさらなる研究を続ける
  3. 研究の成果として効果と安全性が確立できると仮説を立てる
  4. 何万匹というマウスによる実験が開始される
  5. マウス実験による効果と安全性が確認される
  6. 何千匹というラットによる実験開始
  7. ラット実験で仮説の裏付けが取れる
  8. 何百匹というエイプ(霊長類)による実験開始
  9. 人間に最も近い哺乳類であるエイプ実験の結果を元に各国の政府に治験(言うなれば人体実験)の申請を起こす
  10. 政府が承認する
  11. 千人単位の治験開始
  12. 治験で効果と安全性が保証されてから商品化
  13. ここまでで平均20年、平均200億かかり、構造設計から商品化に至る確率47%

そして販売してからも追跡調査を続け、薬品の添付文章は年に1回程度、内容は更新され続ける

つまり十分な研究をし尽くされた結果として商品化されているので、副作用が明らかなのだ

そして副作用が十分に明らかになっているからこそコントロールできている

研究し尽くされ、副作用が明確になり、コントロールできているからこそ治療薬とも言える

用法や用量を間違わなければ何よりも安全なもの
それが治療薬

最後に、本当は副作用よりも恐れるべきものを教えよう

予期せぬトラブル

福岡にある洗顔化粧品メーカーがモッチリとした泡を作るために小麦を加水分解した成分を含有させ、結果として多くの愛用者をアレルギー体質にしてしまい、集団訴訟が起きている事件は記憶に新しい

おそらく製造していたメーカーも、まさか加水分解した小麦でアレルギーにしてしまうなんて想像もしていなかったであろう

これこそが最も恐れるべき「予期せぬトラブル」である

医薬品の副作用は予期できているものであり、必要以上に怖がる必要はないのである