水素水インチキ報道に対する考察01水素水インチキ報道に対する考察02、ならびに水素水インチキ報道に対する考察03のつづき

有効性に信頼できる十分なデータが見当たらない」の意味

前回、エビデンスという言葉の不確定さを理解してもらった上で、話題の元となった報道「産経ニュース「有効性に信頼できる十分なデータが見当たらない」 国立健康・栄養研究所が見解」に言及した
今回はこの有効性に信頼できる十分なデータが見当たらないの真意について説こうと思う

発表した国立健康・栄養研究所は国が国民の健康を守るために設立した独立行政法人(嫌味な言い方をすれば国が収入源である納税者の労働力を守るために市販品の安全性を研究するために設立した機関)であるから信ぴょう性は高い

そもそも現在の水素水ブームは水素水インチキ報道に対する考察01でも触れたが、2007年に始まった

2007年6月、日本医科大学医学研究科の太田成男教授らの研究グループが英国の科学誌『Nature Medicine』に「Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals(水素は酸素ラジカルの細胞毒性を選択的に還元することで治療用の抗酸化物質として作用する)」とする論文を発表したことが始まりであった

この論文が「水素水は体に良い」「水素水でサビない身体」「水素水でアンチエイジング」と水素水メーカーが宣伝に利用する根拠であり、メディアでも大きく取り上げられた

さらに追い風となったのは、昨年の10月、中部大学大学院医学研究科の市原正智教授らの研究グループは米国の科学誌『Medical Gas Research』に「Beneficial biological effects and the underlying mechanisms of molecular hydrogen. comprehensive review of 321 original articles(水素分子の有益な生物学的効果と基本的機序。321本の原論文を包括的にレビュー)」によって、人体における病理生理学的な有効性の報告や、人体を対象とした研究論文は過去7年間で32本に登ると報告したのである

日本の偉い教授先生方が有効だって言うんだったら、なんで国立健康・栄養研究所は「有効性に信頼できる十分なデータが見当たらない」なんて結論を出したの?とお思いになる方も多いであろう

では前述の太田教授の論文を読み解くことにしよう

論文では、試験管内で水素分子ガスがヒドロキシルラジカル(活性酸素の一種)を選択的に消去するという従来の説を前提として、培養した細胞においても水素分子ガスがヒドロキシルラジカルを消去する効果がみられたと報告している

さらに脳の血流を一時的に止めては流すを繰り返すことで脳梗塞症状を再現したラット(血流を止めることで脳組織に損傷を与えて活性酸素を発生させ、血流再開によってさらに損傷を引き起こさせる)に水素分子ガスを吸入させたたところ、脳組織に対する損傷が抑えられたと報告している

勘の良い方はすでにお気づきだろうが、太田教授が実験に用いたのは水素水ではなく水素分子ガスなのである

特に生体への影響を証明したラット実験において、太田教授は濃度2%と4%の水素分子ガスを吸引させ、肺から定量を吸収させているのである

要はこれらの実験結果は水素分子ガスを肺から直接血流に載せた場合の働きであって、口から飲む水素水のそれではないということだ

ほとんどの水素水メーカーはこの「水素分子ガスの効果」をエビデンスだとし、あたかも水素水の効果であるかのごとく宣伝している

我々が美容健康商品について患者さんから質問があった際に

エビデンスなどという横文字を使って御大層な説明を繰り広げる商品は十中八九詐欺

と話している所以である

さて、そもそも水素水とは何なのかについては次回に詳しく述べようと思う

水素水インチキ報道に対する考察05につづく