EDと気分障害(うつ病)

うつ病とは

うつ病とED気分障害、ことに「うつ病」や「双極性障害」など障害の患者数は2008年に厚生労働省が実施した患者調査によると104.1万人となり、現在までほぼ横ばいとなっている。 特に「うつ病」とEDの関連性は1970年代後半ごろから指摘されはじめ、1990年代後半にはED患者のうつ病率が非ED患者と比べて2.6倍であるとの報告もされている。

EDと「うつ病」は、相互に関連し合っている部分がある。
EDを大分すると、器質性のEDと、心因性のED、混合性のED、薬剤性のEDがあるのだが、「うつ病」の場合は、心因性でもあり、器質性でもあり、場合によっては薬剤性の場合もある。

うつ病による心因性のED

うつ病になると憂鬱な気分から脱することができなくなり、無気力になっていく。 無気力とは意欲の減退とも言い換えることが出来、性欲の減退に直結し、さらにはEDに繋がることも少なくない。 無気力からのEDは典型的な心因性のED症状といえる。

勃起は性的な興奮が脳から陰茎に神経伝達されることで発現するが、うつ病などの気分障害を患うと、性的興奮を感じられない、場合によっては嫌悪感すら感じるケースも有る。 このような状態では脳から「勃起せよ」という命令が発せられないので勃起できない状態となる。 バイアグラやシアリスをはじめとするED薬は血管拡張作用により血流を増加させる働きと海綿体に流れ込んだ血液をせき止める効果があるので性的興奮が伴わなくとも、陰茎が性的な刺激を受ければ十分に反応し得る。 たとえ自分自身が乗り気でなくとも、ED薬を服用しておけば、パートナーの求めに応じることは可能なケースが多く、十分な勃起が得られたという事実が自分自身をその気にさせるという相互効果も十分に考えられる。

当院の患者さんの中には精神科や心療内科を受信しているという方も少なくない。 あえて受信中の精神科や心療内科でED薬の処方を受けない理由を問うと「気分障害を発症させた頃はセックスにまで気が回らなかった」「親身になってくれるホームドクターだからこそEDの相談はしづらい」などといった意見が大半を占める。 言い換えればセックスにまで気が回るようになった、担当医との人間関係を考慮する余裕が生まれたと取ることができ、気分障害が改善に向かっている証拠だと考えている。

うつ病による器質性のED

男性ホルモンの一種である、テストステロンの分泌量が低下することによって、さまざまな症状をきたすことを「テストステロン減少症(低下症)」や「性腺機能低下症」と呼ぶ。

うつ病など気分障害によって若年層に起こることもあるが、男性更年期障害と呼ばれるLOH症候群(加齢性性腺機能低下症候群)では、加齢やストレスによって男性ホルモンであるテストステロン、アンドロゲンが低下することでうつ病を引き起こすこともある。

うつ病と男性ホルモンの低下はEDを誘発すると考えられる。 年齢と共に男性ホルモンがある程度低下していくのはごく自然なことではあるが、標準値よりも低下した場合、鬱病による器質性のEDとなる。

うつ病による薬剤性のED

うつ病の治療に用いられる抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬、抗精神病薬などの中には、性機能を悪化させるものがある。

現在、抗うつ薬として最も良く使用されているSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、中枢神経系でセロトニンを増加させることで、性的衝動に関わるドーパミンの作用を抑制することが知られている。 またいくつかのSSRIは射精を抑制する作用があり、これを利用して早漏の治療にSSRIを応用することもできる。

SSRIを服用していてもED薬の有効性は認められている。 ただしSSRI以外の向精神薬にはED薬の効果を低下させる物もあるため、併用薬については慎重に検討すべきである。