虚血性心疾患とは

心臓病と聞くと我々世代が思い浮かべるのが「心筋梗塞」と「狭心症」ではないだろうか?

ともに冠動脈の閉塞や、狭窄などによって心臓の筋肉(心筋)への血流が滞り、心臓自体に何らかの障害を起こす疾患で、この2つを併せて「虚血性心疾患」と言う。

厚生労働省が2014年に実施した「患者調査」によれば、虚血性心疾患(高血圧症由来のものは除く)の患者総数は172万9,000人で、うち男性が94万7,000人であった。

我が国の成人男性人口が6,225万人であるから、福岡でも10人に1人以上は心疾患を抱えている計算になる。

EDと虚血性心疾患の関係性

バイアグラと心疾患厚生クリニック福岡の患者さんの多くは「バイアグラは心臓病の薬が元になっている」と知っていらっしゃるので、話は早いのだが、「バイアグラの歴史」と「シアリスの歴史」に記載してあるように、バイアグラの主成分であるシルデフィルとシアリスの主成分タダラフィルは心臓から肺に血液を送る血管(肺動脈)が狭くなってしまうことで血流が滞り、肺動脈の血圧(肺動脈圧)が高くなる病気=肺動脈性肺高血圧症の治療薬に使用されている。

ED(勃起不全)の定義や症状、原因、種類」でも触れたが、器質性のEDは加齢などによって海綿体への血流が滞ることが原因の一つである。

つまり、虚血性心疾患も肺動脈性肺高血圧症もEDも血管に何らかの原因を抱えることで血流が滞った結果という共通点があるのである。

心臓の冠状動脈で血流が滞れば心筋梗塞や狭心症などになり、肺動脈の血流が滞れば肺動脈性肺高血圧症になり、陰茎動脈で血流が滞れ

ばEDとなるわけだ。

血流の滞りは動脈の太さが原因となっている。 動脈硬化によって起こる血流悪化は、細い動脈から始まり、やがて太い動脈へと広がっていく。 動脈の太さは人体の場所ごとに異なっており、脳周辺では直径5~7㍉、心臓周辺では直径3~4㍉であるのに対して、陰茎動脈は直径1~2㍉しかない。 よって動脈硬化の影響として最初に現れる症状がEDだと言っても過言ではないのだ。

加えて、脳動脈も冠状動脈も肺動脈も血管の拡張率は15%前後であるのに対して、陰茎動脈は勃起時には80%程度まで拡張する。 これは他の動脈では仮に血流の滞りが起きたとしても、不足した血液を他の血管が運んでくれるのだが、陰茎動脈にはそういった血流の代替回路がないからである。 ゆえに近年ではEDは動脈硬化の最初のシグナルと考えられている。

ED症状を感じたら人間ドックを受診

中高年の「まだまだ大丈夫」「若いもんには負けん」という健康への過信は、大変危険である。

当院の患者さんの多くも外では元気アピールをしてらっしゃる方が多いわけだが、EDという疾患が出ている以上、我々としては一度精密検査を受けることを推奨している。

とかく福岡には「すぐに薬を飲んだり、病院にかかるのは芋引き」「デーンと構えとくんが博多モンたい」という気質があり、ヘビーユーザーの患者さんでも絶対に自分の周りにはEDだなんて知られたくないと言う。

ただ、不摂生がたたって不健康な60代、70代、80代を迎えるより、幾つになっても元気バリバリな方が絶対に良いに決まっている。

当院が10年前に中洲に開院したのは、危険極まりない外国製のコピーバイアグラをコソコソと購入していた「病院嫌い」の博多モンでも天神モンでも気兼ねなくホンモノの医療を受診できる環境をというコンセプトであった。

当院でホンモノの医療による明確な効果を実感いただいている患者さん達にはぜひ定期的な精密検査や人間ドックといった医療習慣を身に着けていただき、いつまでもチカッパ元気な男性でい続けていただきたいと願っている。

セックスと心疾患

「セックスとはスポーツの一種である」と言ったのはウッディ・アレンだが、たしかにセックスの運動量は100Kcalであり、それはちょうど駆け足で3階まで階段を登るのと同じ運動量と言われている。

もし、2階まで階段を駆け上がる程度で息切れを起こすようなら運動不足と動脈硬化のいずれかである。 健康への過信を改めなければならない。

性癖とは加齢とともにアブノーマルに偏っていく傾向があるが、自分の体力や健康を過信しすぎてハード過ぎるセックスに挑むのは非常に危険な行為だ。

バイアグラの国内販売が始まった頃に「腹上死」が増えたと週刊誌がはやし立てたおかげで、バイアグラ、シアリス、レビトラといったED薬に対する誤解が生まれたが、少なくとも日本国内で腹上死とED薬の因果関係は認められていない。

むしろED薬は陰茎動脈だけでなく、冠動脈や脳動脈をも拡張するので血管障害がある場合は服用しておいたほうが安全との見解もあるほどだ。

しかしED薬がセックスのために存在している以上、セックスは極力するなとは言いがたいのも事実である。

そこで提案したいのはスローセックスである。

ガムシャラなだけのセックスは若者に任せ、我々中高年はアブノーマルでスローなセックスを楽しもうではないか。

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ED薬(バイアグラ、シアリス、レビトラ)とニトログリセリン製剤

虚血性心疾患と診断されると、「ニトログリセリン製剤」を処方されることがある。 「レビトラの歴史」に詳しく書かれているが、バイアグラ、シアリス、レビトラといったPDE5阻害薬は元々ニトログリセリンの代替薬として開発が始まった経緯もあってニトログリセリンとは相性が悪く、降圧効果が増強されるため使用禁忌薬となっている。

よって併用は絶対にしてはならない。

加えて、不整脈の治療薬「塩酸アミオダロン」などの薬も、ED薬との併用が禁止されているので、心疾患と診断された場合は、必ず主治医に確認するようにしていただきたい。