EDは特別なことではない

「EDとは無縁」「俺はまだまだ元気でビンビンだ」と公言する者ほど、実はEDを気にしている。

安心してください。 EDは特殊な病気ではありませんよ。

安心してください。 EDは特殊な病気ではありませんよ。

例えは悪いが、やましい者ほど声高に身の潔白を主張するように、思い当たるからこそ雄弁に語ってしまうのが人間だ。

EDは「Erectile Dysfunction」の略であり、意味としては「勃起機能の低下」を指す。 日本語では「勃起障害」「勃起不全」と訳されるが、いわゆる「インポ」と称されるようなピクりとも勃起しないケースではなく、硬さや維持が十分でない、言い換えるなら「満足のいく性交が行えない勃起状態」全般である。

一般的には「硬さ不足」「中折れ」が最も多いEDの症状である。
要は自分の意思とは裏腹に、勃起が追い付かない状態と言えば、思い当たる者も多いと思われる。

日本では成人男性の1/4が「時折、満足のいく勃起が得られない」という中度以上のED症状を抱えているとされているす。
しかしながら、バイアグラが登場して20年近く経つ現在でもEDの認知度はまだまだ低い。
ゆえに前述のような強がり発言をしてしまう。

製薬メーカーの調べでは「セックスは出来るが硬さが十分ではない」という軽度のEDも含めると、その推定数は1,800万人ともされており、単純計算でも成人男性の1/3が何らかのED症状を抱えていると言わざるを得ない。

特に30代半ばからEDの自覚は増え、50歳以上では2人に1人がEDを自覚しているという統計も出ている。

EDの定義

  • 意図している勃起が得られない。
    または維持できない。
    よって満足のいくセックスが行えない。

  • 外傷や手術などの物理的要因がある場合を除き、上記の症状が3ヵ月以上続く。

とされている。

EDの症状

通常、性的な刺激や性的な興奮があると、脳が「セックスを行うタイミング」であると認識し、「勃起せよ」という命令が神経を伝って陰茎に下っていく。 命令を受けた陰茎は海綿体の動脈を拡張させて、血液を多く流れ込ませ、勃起という現象が起こる。 しかし、神経や血管に何らかの問題があって海綿体に十分な血液が送り込まれない状態がEDである。

EDの症状は十人十色で「性欲や興奮はあるのに勃起しにくい」という方もおられれば、「一旦は勃起するのに、いつの間にかしぼんでいる」、「挿入中なのに気づくとヤワくなっている」、「オナニーでは射精までイケるのに、セックスでは射精にこぎつけない」など様々な自覚症状がある。 こういった経験が何度か続いてしまうと、徐々に自信を失い、やがてセックス自体を億劫に感じてしまう者も少なくない。

やや大げさに聞こえるかもしれないが、セックスは生きがいと密接な関係にある。 現に老人介護施設に入居している70代男性の多くは「老後の生きがいは恋愛」「若いセックスパートナーが欲しい」と発言しているし、セックスの減少はビジネス能力の減少と比例しているというデータもアメリカには存在する。

EDの原因とその種類

前述のようにEDとは「神経や血管に何らかの問題があって海綿体に十分な血液が送り込まれない状態」である。 この「何からの問題」の原因によって大きく分けると3つの種類がある。

器質性のED

器質性のEDとは、神経の障害、動脈硬化の進行などが原因となって起きるEDであり、特に持病などがなくとも加齢と共に血管は老化し、弾力が徐々に低下する。 血管の廊下に伴って弾力が失われる症状が動脈硬化であり、動脈硬化の進行とEDが密接な関係にある。 動脈硬化によって血管が十分に拡がらなくなり、海綿体に十分な血液が流れ込まなくなるというわけだ。

動脈硬化を始め、高血圧や糖尿病、高脂質症などの生活習慣病も血管に負担をかける。 喫煙や過度の飲酒も同様の危険性があり、近年、循環器内科のジャンルではEDは様々な生活習慣病を早期に発見するための重要なバロメーターとして大いに注目されている。

続いて神経について。 神経には脳をはじめとした中枢神経と、脳と末梢をつなぐ脊髄神経、身体全体に張り巡らされている末梢神経があるのだが、性的刺激を脳が感じると、「勃起せよ」という命令を中枢神経、脊髄神経、末梢神経を経由し、陰茎付近にある勃起神経に下す。 しかし、神経に障害があると、「勃起せよ」という命令が、陰茎に伝わらず、結果的にEDとなってしまう。

神経の問題としては代表的なものは、糖尿病性の神経症やパーキンソン病などの内的要因と、脳出血や事故による脊髄の損傷、前立腺肥大や前立腺がんの手術など、神経を傷つけるような外傷が原因となることもある。

心因性のED

20代や30代前半でもEDに悩んでいる者は少なくない。 この年代に多いのが「心因性のED」である。

身体的に生活習慣病などの血管や神経の問題がないにもかかわらず、ED症状がある場合というのは、日常生活のストレス、セックスに関するトラウマをはじめとした精神的ストレスが引き金となっている場合が多い。 最近良く聞かれるのが妊活プレッシャーと言い、パートナーの排卵日になると決まってED症状が現れるというケースもある。

子作りというプレッシャーや「今日こそは!」という強迫観念、包茎など陰茎のコンプレックス、テクニック不足などのトラウマが精神ストレスとなり、性的興奮が神経を伝わらなくなってしまうというわけだ。

先日、メジャーリーガーのイチロー選手は「笑われたという経験が強くなる原動力になった」と発言していたが、誰もが彼のような精神力を持っているはずもなく、セックスの経験が浅い10代後半~20台の若年層や、責任ある仕事を任されたり、子作りを家族から熱望される30代~40代の男性は心因性のEDに悩まされる傾向が強い。

また、近年では「うつ病」による「性欲の欠乏」、「セックス嫌悪」なども増えており、これらも心因性のEDに分類されている。

薬剤性のED

前述の「うつ病」も関連するのだが、何らかの持病があり、そのために服用している治療薬が原因となっているEDを「薬剤性のED」と呼ぶ。

薬の副作用が原因となっており、抗うつ薬・向精神薬・睡眠薬を服用している者や、降圧剤を服用している者などでは薬剤性のEDを疑うべきである。

服用している薬剤を変更することでEDの症状が改善されるというケースも少なくない。

特に抗うつ薬や向精神薬は副作用としてEDがあることが明言されていないことも多く、薬剤性のEDの存在を知らないまま「EDも心の病だ」と思い込み、EDを悪化させることもあるので、注意が必要だ。

日本性機能学会が監修を務める「ED診療ガイドライン」にEDを引き起こす可能性のある薬剤が掲載されているので、その一部をここに掲載する。

降圧剤 サイアザイド系利尿剤、ループ利尿剤、K保持性利尿剤、中枢交感神経抑制剤、末梢性交感神経抑制剤、血管拡張剤、α遮断剤、αβ遮断剤、β遮断剤、Ca拮抗剤、ACE阻害剤、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤
抗うつ剤 三環系抗うつ剤、SSRI
抗精神病剤 フェノチアジン系、スルピリドなど
抗てんかん剤 イミノスチルベン系
睡眠剤 パルピツール酸系
抗潰瘍剤 H2受容体拮抗剤、抗ドパミン剤、スルピリド
抗男性ホルモン剤 抗アンドロゲン剤、LH-RHアナログ
脂質異常症治療剤 スタチン系、フィブラート系

一般社団法人 日本性機能学会 公式サイト

EDの治療

ファーストチョイスとしての治療選択肢はバイアグラシアリスレビトラといったED薬の服用となる。 厚生クリニック福岡の場合、未経験者には3剤のアソートパックを試してもらい、自身のライフスタイルに合ったED治療薬を見つけてもらうようにしている。

万が一、ED治療薬によって症状の改善が見られない場合、何らかの疾患を発症している可能性を疑い、かかりつけのホームドクターによる精密検査を勧めることもある。

実際、ED症状で来院され、当院実施の簡易検査(血圧、脈拍、体温測定)によって自身が高血圧や頻脈があることに気づき、ホームドクターの下で適切な治療を受ける良いキッカケとなったという患者さんも少なくない。

国内正規のED治療薬3種 左からレビトラ、バイアグラ、シアリス

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EDは多くの要因をはらんだ疾患の一つであり、健康のバロメーターでもある。

適切な治療によって、より良いセックスが生きがいややる気に繋がり、質に高いライフスタイルの一端となれば幸いである。